レースクイーンの廃止による日本への影響やレースクイーンの存在意義等について解説!

2022.12.01

2018年、F1の運営は、「大会のブランド価値や現代の慣習にマッチしない」という理由でレースクイーンの廃止を正式発表しました。

当記事では、レースクイーンの廃止の経緯や日本のレースクイーンへの影響、レースクイーンの仕事等について解説します。

レースクイーン廃止の経緯

2016年、アメリカのメディア関連企業であるリバティメディアはF1を買収し、F1のオーナーとなりました。そしてオーナーとして、F1という競技の魅力を広げるための様々な対策を講じてきました。

その対策の中で同企業は、「女性に過度な露出をさせ、性的な対象としてビジネスに用いているグリッドガールは、我々の慣習にマッチしていない」という声明を出し、グリッドガールを廃止しました。

 

同企業がグリッドガールを廃止しようとしたきっかけはなんだったのでしょうか。

「どこかの女性団体から抗議を受けたことがきっかけなのではないか」と見る人も多くいますが、実際にそれを示す根拠はありません。「特定の団体から抗議を受けた」という声明はF1側から出ていない上、抗議を行ったと発表をしている女性団体も存在しないというのが事実です。

 

レースクイーン廃止のきっかけになったとされている事柄のひとつは、近年ほかのスポーツ界隈に起きている様々な動きです。

プロフェッショナルダーツの代表的な団体であるプロフェッショナル・ダーツ・コーポレーションは、入場の際アスリートとともに歩く女性「ウォーク・オン・ガール」を廃止しました。

さらにボクシングにおいて次のラウンド数を表示する女性「ラウンドガール」については、以前から否定的な意見が多くあります。

こうした界隈の動きや世間の評判が、F1レースクイーンの廃止に繋がったのではないかと考えられています。

日本のレースクイーンへの影響は?

海外では続々と高まりつつあるレースクイーン廃止の動きですが、日本にも影響はあるのでしょうか。

結論から言うと、海外でレースクイーン廃止の動きが出ているからといって日本のレースクイーンも廃止されると考えるのは早計である可能性が高いでしょう。なぜなら、廃止の動きが出ているレースクイーンと日本のレースクイーンは、やや立場が違っているためです。

 

先ほどの通り、近年廃止されつつあるレースクイーンは、厳密にはレースクイーンではなくグリッドガールと呼ばれる職業です。

グリッドガールと日本のレースクイーンでは、選出している人も行っている仕事も違っています。したがって、グリッドガール廃止の動きがそのまま日本のレースクイーンに直結するとは限らないのです。

グリッドガールとは?

グリッドガールとは、F1を開催するプロモーターが選出・採用する女性のことです。

グリッドガールはレース前のスターティンググリッドにおいて、チームの名前やゼッケン、選手名が書かれたボードを掲げる役割を持ってます。ほかにも、ドライバーを案内するスタッフのような役割を果たすこともあります。

 

グリッドガールは、開催国をイメージさせる色合いの服や、国の民族性を表した服を着ていることが多い傾向にあります。

グリッドガールの役割を持つ女性は、日本のF1には存在しません。

 

上記のような仕事を行うのはレースを見に来た子どもたちで、彼らはグリッドキッズと呼ばれます。グリッドキッズは、希望者の中から抽選で決定されます。

なお、日本は日本でもSUPERGTの場合は、子どもではなく大人の女性がボードを掲げています。しかし彼女たちは、プロモーターやレースの主催者が選んでいるわけではありません。

チームのスポンサーやチーム自体が選んで採用しているため、海外のグリッドガールとは厳密には異なっていると言えるでしょう。

レースクイーンとは?

レースクイーンは、海外におけるグリッドガールとは異なる側面を持っています。

彼女たちがグリッドガールと違っているのは、プロモーターではなくチーム側から選出されているという点です。

 

また、レースクイーンは、グリッドガールのようにドライバーの案内をすることはありません。基本的には、スポンサーの商品やサービスをアピールすることを役割としています。

レースクイーンはレースだけでなく、車の発表会やモーターショー等に参加することもあります。

チームのスポンサーが出資しているため、衣装には企業のロゴがデザインされている点も特徴だと言えるでしょう。

レースクイーンの仕事は?

様々な意見が出ているレースクイーンですが、彼女たちはそもそもどのような仕事を行っているのでしょうか。

存在こそ有名なものの、彼女たちの仕事内容については理解していない人が多い現状にあります。

事実レースクイーンの廃止賛成派の中には、ステレオタイプの助長を懸念するものとはまったく異なる、「必要性がわからない、レースを見る上での差し障りにしかならない」といった職業そのものを否定する意見も見られました。

露出度の高い服を着て立っているだけ、と誤解されることも多いレースクイーンですが、実は苦労も多く、高いプロ意識がなければできない仕事でもあります。

 

レースクイーンの主な仕事のひとつは、ドライバーの徹底的なサポートです。レースクイーンたちはドライバーに傘を差し、彼らを雨や太陽から守っています。

特に座席が剥き出しになったフォーミュラーカーの場合は、屋根がないため、雨の中傘がなければドライバーはびしょ濡れになってしまいます。そんな彼らに傘をさし、雨から守るのがレースクイーンです。

レース会場では、自分はずぶ濡れになりながらもドライバーを完璧に雨から守っているレースクイーンたちの姿がちらほら見られます。

 

また、レース終了後のドライバーに飲みものを渡したり、彼らが脱いだヘルメットを受け取ったりするといった仕事も行っています。

ドライバーのサポート以外には、以下のような仕事もしています。

 

・ファンとの交流
・レースの解説
・メデイアの取材対応
・ブースでのグッズ販売
・ブースイベントのアシスト
・スポンサーのサービスや商品の宣伝

 

レースクイーンは単なる飾りではなく、レースを行う上で欠かせない存在であることがわかります。

レースクイーン廃止によりグリッドキッズが登場

リバティ・メディアはグリッドガールを廃止し、代わりにF1ドライバーを志す子どもたちを「グリッドキッズ」として起用することを決めました。

グリッドキッズはジュニア・フォーミュラやカートでレースを行っている子どもたちや、一部のモータースポーツクラブに所属している子どもたちの中から選ばれます。選出は、抽選またはレースにおける貢献度や成績を考慮した上で行われます。

 

グリッドキッズに置き換わることで、性別のステレオタイプが取り除かれていくことが期待できます。それだけでなく、ドライバーを目指す子どもたちにレースのサポートを任せることで、彼らに大きな刺激を与えることもできるでしょう。

F1レースやドライバーたちの存在を間近に感じられる経験は、将来ドライバーとなる子どもたちのモチベーションを上げてくれるのではないかと期待されています。

まとめ

F1は、グリッドガールの廃止を決定しました。今後は彼女たちの代わりに、グリッドキッズが活躍していくとされています。

なお、グリッドガールとレースクイーンは異なる存在であるため、日本のレースクイーンが今後廃止されるかはまだ定かではありません。

レースクイーンの廃止は賛否両論あり、どちらが正しいと明確に言うことはできません。

 

しかし、レースクイーンはただ露出の多い衣装で立っているだけではなく、ひとりひとりが高いプロ意識を持ってレースを支えている、誇るべき仕事であるということは多くの人に知られるべきでしょう。